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池谷監督のドキュメンタリー「先祖になる」。

「被災地」や「被災者」、「復興」という言葉は、なんとなく、何かが違うような気がして、口にすることをためらってしまう自分がいる。実際に「被災地」や「被災者」の人たちに出会えば出会うほど、その想いは強くなり、複雑な気持ちになったりもする。でも、この映画を観ると、「好きになる」ってこと。結局のところ、それがすべてなんだと思う。

主人公の直志さんがとにかく魅力的。生きることの奥深さがひしひしと伝わってくる。
監督と一人の人間との関わり、その愛情や尊敬の念が映像の隅々まで溢れていて、観終わった後、これは「震災映画」ではない、と思った。
特典映像の監督インタビューで、監督自身がそうおっしゃっていて、ああ、映像から直に伝わってきたなあ、と改めて心を動かされた。

池谷監督は、福島県白河出身。震災後、ボランティアで何かできないかと、仙台の友人に連絡を取って手伝えることあるか?と聞いたら、来るなら映画を取りに来いと言われた。
インタビューで、監督は「映画は、いい意味で観客を裏切ることだと思う。撮影している自分自身も現実に裏切られていって、それがとても良かった。陸前高田で、震災1月後の自粛ムードの中、花見が開かれていた。その花見を主催していたのが直志さんだった。彼は住民の人たちを前に「今年も桜は同じように咲く」と言った。その土地にしっかり根ざしている生活者の言葉だと思った。そのとき直志さんに惚れた」と語っていた。
そして、1年半をかけて陸前高田に50回以上通いながら撮影した作品が、この「先祖になる」だ。

「直志さんに出会って、これは震災映画ではないと思った。震災があったから、出会えた人ではあったけれども、彼は、人間が生きる上で大切にしなければならないことを体現している人で、それを丁寧にすくいあげることが、この映画なんだと思った。」

この映画はナレーションや解説がない。
「被災地で一生懸命生きている人たちに下手な解説や演出を加えたくなかった。これは、一人の人間の生きざまを描いた映画。彼のとった行動を良い悪いで判断することはできない。観た人が色んな角度で、色んなものを観る。そんな余白を大切にしたかった。」

被災者、被災地というイメージや先入観は、実際には十人十色の、1人1人の人生に対して時にひどく残酷で、傲慢になり得る。この映画は、そのことだけでなく、震災でたくさんのものが失われたけれども、生まれたものも確かに存在する、ということに気づかせてくれる作品だと思う。
人間に生まれてきて、ほんとうに良かった。

上映日は3月13日金曜日。
公式サイトに予告編もあります。是非。⇒ (Click!)  
映画会詳細は⇒ (Click!)