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今年に入って、雑誌「TURNS」の取材で、ある女性に出会った。

つくば在住の兼子美由起さん。
絵のなかから出てきたかのような、
スッとしていて、どんな景色にも、どんな背景にも、馴染んでしまいそうでいて、
くっきりとした輪郭を放つような、不思議な存在感のある人だった。

作陶をはじめたきっかけは、ある先生との出会い。
「つまらないように見えることに心血を注ぐことは尊く神聖で、工芸や芸術を越えて、一生をかける価値がある」。
先生に教わったことを、こう話してくれた。

陶芸の技術はほぼ独学。
大好きなイタリア人画家、モランディが生涯描き続けた題材の“瓶”を、どうしても作りたくて、
誰に教わるわけでも、誰に見せるわけでもなく、
ひたすら絵をなぞるように試行錯誤を重ねて3年。
瓶だらけになった住まいを眺めて、
「これを続けるためには売らないといけないんだ」と気づいたそう。
展示販売をはじめてからは、「瓶を見てもらうためにも・・」と、食器も作りはじめた。

作業場に並んだ瓶たちは、兼子さんにどこか似ていて、
ずっとずっと昔から、そこにあったかのような佇まいが印象的だった。

なんの用途もなく、目的すらないものを、ただただ作りたくて、ひっそりと作り続けている。
そんな人がいて、そんな時間がある。

余談。

小学3年生の頃の、ある日。
兼子さんは、みんなで同じランドセルを背負っていることに、きゅーっとなり、
あまりに辛かったので、帰り道にランドセルを壊してしまった。
ご両親は、「仕方ないなあ~」という感じで、
それから卒業まで、ひとりだけ手提げ鞄で通うことを許された。

6年間、踏んでも蹴られても壊れないよう、頑丈につくられているランドセル。
それを9歳の少女が壊したのかあ・・。
いまでもふとした瞬間に、小さな兼子さんの映像が、脳裏に浮かぶ。
けれど、この“事件”のことは、「怖い人だと思われそう」なので、原稿には盛りこまないと約束した。

兼子さんは古本が大好きで、あちこちで出会った古い本をこつこつ集め、
いまでは毎週木曜日に作業場を開け放し、古書店を営んでいる。
「古本屋の良さは、好きなものも嫌いなものも、見たいものも見たくないものも、平等にあること」
選書の基準は、どこか「とんがりの感じられる本」だそう。
ジャンルが幅広くて、読みたい本がたくさんあった。
どの本を手にとっても「あ、それはね・・」と言葉を添えてくれるのも嬉しい。
つくばに行くことがあれば、是非立ち寄ってみてほしいなあ。
素敵な一冊に出会えるんじゃないかしら。
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特集記事が掲載された号は、2月20日に発売されたようで、現時点では最新版。
表紙が、矢野津々美さん撮影の兼子さん。
機会があれば手に取ってみてください。