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色褪せた壁
破れた張り紙や落書き
乱雑に積まれた本や漫画
部屋のなかには くたびれた布団が散乱していて
あちこちに洗濯物がぶら下がっている
湿り気を帯びた空気 食べ物の匂い
歴代の学生たちの息遣いまでもが直に伝わってくるような
雑然とした空間

その映像を見ているだけで
冒頭から泣きそうになった

築105年
京都大学の吉田寮をモデルとした
日本最古の学生自治寮の存続をめぐる物語

「好きな恰好をし好きな時に好きなものを食べ
好きなときに好きな場所で眠る〝変人たち″の巣窟」
廃寮に関しても
熱っぽい人 少し距離を置いてみている人
諦めかけている人 そもそも関心のない人
みんなが同じ方向を向いているわけではない
けれど全会一致で決められたルールに基づいて
彼らはそこで暮らしている
一つの鍋を囲んで談笑し
食べかけのラーメンを分かち合う
ひとりひとりに声があり居場所があるのだ

学生の頃に入り浸っていたオンボロ自治寮の風景が蘇る
あのとき見ていた景色 流れていた時間
今はその寮もこの世には存在しない

そして
あの日を境に立ち現れたいくつもの壁を想った
気づかなかっただけで
多分ずっとそこにあったのだけれど
 
涙ながらの嘆願 怒りの声
内部分裂 
迷いや葛藤
壁の向こうに立っている人にも
背負っているものがあり
守りたいものがあるはずで

白黒では割り切れないグレーのグラデーション
未分化なものが細分化され
新たな壁が生まれる

いったい何と闘っているのか
見えない巨大な力 時代の流れ
どうやったら抗えるのか

たった1時間の物語
劇的な展開があるわけでもなく
分かりやすい答えが用意されているわけでもない

書籍の壁が崩れて和敬清寂の軸が立ち現れるシーンからの茶席
そしてラストのセッション

―それでもこれはラブストーリーだ
冒頭のことばがじわじわと
エールのように
決意のように
祈りのように響いてくる

多数決では守れないもの
誰かにとっては取るに足らない何かかもしれないけれど
うまく言葉にできない大切なもの
そんなたくさんの小さなラブストーリーたちで
この世界は成り立っているのかもしれない

そして私はこれからも
そんな世界に恋をしながら生きていきたい

渡辺あやさんの素晴らしい脚本
繊細な演出
瑞々しい演技と映像
圧巻の美術
物語を照らし出す月明かりのような
波のような音楽
何から何までほんとうに素敵だった

この時代を共に生きる人たちと
無性に語り合いたくなるドラマ
NHK総合では17日の14時から放送
また観てしまう気がする

公式サイト: (Click!)