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陶器市に欠かさず顔を見せてくれていた新井陽一郎さんが、逝ってしまった。
旅好きの新井さんは、奥さんの和子さんと、とても仲が良くて、 ご夫婦で、国内外の山に登り、その土地の手作りのものを少しずつ集めていた。 春と秋、私のテントにふらりと現れると、 毎回、茶系のぐい呑みを1つ選んで、「今回は、これを」と求めてくださっていた。 柔らかな声と物腰。 すぐに好きになった。 姉家族が群馬で暮らしていた頃、安中のご自宅にお邪魔すると、 書斎の飾り棚に、あちこちで出逢った美しい陶器があり、 その一画に、私のぐい呑みも、澄ました顔で鎮座していた。 「わ~!こんな風に置いてくださってるなんて~!!」と驚くと、 一度も使わずに、手にとっては眺めているという。 そして、器の内側に浮かび上がる鉄分が銀河系みたいだと、 愛しそうに話をしてくださった。 昨年の秋、今年の春と、いらっしゃらなかった。 どこか旅にでも出かけたのかな なんだか胸がざわざわした。 ざわざわしたまま、作陶展の案内状を書いた。 今朝、窯に火を入れた後に届いた一枚の葉書き。 長い長い旅に出かけてしまった、と知る。 星の綺麗な夜。 もうすぐ器が焼き上がる。 新井さん、ほんとうにほんとうに、ありがとう |
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